Q.
投資用に区分所有マンション(1戸)を購入して、賃貸しています。確定申告では、建物本体と建物附属設備を分けて減価償却費を計算していましたが、税務署から一括して減価償却費を計算するように指導されました。税務署の指導通り、修正申告が必要でしょうか?
A.
建物本体と建物附属設備とでは耐用年数が大きく異なります。
たとえば、建物本体の耐用年数は鉄骨鉄筋コンクリートや鉄筋コンクリート造であれば47年、鉄骨造であれば27年や34年(骨格材の肉厚で違ってきます)となっています。これに対して、建物附属設備の耐用年数は、電気設備や給排水又は衛生設備及びガス設備は15年などとなっています。
これまで建物附属設備の耐用年数を15年で計算していたのに、それを47年で計算しなおすことになると、それだけ経費が減って、不動産所得は多くなり、納めなければいけない税金も増えることになります。また、借り入れをしてマンションを購入していた場合、減価償却費は現金支出がない経費ですから、その分を返済に充てている人もいるかと思います。税務署の指導に従うとすると、返済計画を根本から見直すことになりかねません。
結論から言いますと、建物本体と建物附属設備の減価償却費は分けて計算することが可能で、税務署の指導通りにする必要はありません。ただし、税務署に説明するためには、建物本体と建物附属設備それぞれの取得価額の計算根拠となる資料を揃えなければなりません。
ここからは、資料から建物本体と建物附属設備それぞれの取得価額の計算方法を簡単に説明します。
まず、マンションの取得価額を土地と建物の取得価額に分けます。
売買契約書にそれぞれの価額が記載されていれば、その金額となります。売買契約書で分かれていない場合でも、売主の経理処理で分けられていれば、その金額を使うことができます。売主に資料がない場合は、固定資産税評価額を指標とすることも可能です。指標と言ったのは、必ずしも固定資産税評価額をそのまま使うのではないことに注意してください。また、固定資産税評価額は3年に1度しか評価替えが行われないので、評価替えした時から取得した時までの土地の価格変動や建物の損耗分を補正する必要があります。
続いて、建物の取得価額を建物本体と建物附属設備の取得価額に分けます。
これも売買契約書からそれぞれの取得価額が分かれば、その金額となります。もし分からない場合は、建築主が保存している工事請負契約書を基に、建物本体と建物附属設備それぞれの取得価額を計算することになります。購入したマンションが新築でない場合は、損耗分の補正をします。
税務署が「建物本体及び建物附属設備の価額が明確に区分できなかったので、やむを得ず、建物附属設備の価額を建物本体の価額に含めたところで減価償却費を計算」することは認められませんので、必要な資料を揃えることでトラブルを回避できます。
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